過払い請求訴訟の争点

TOP貸金業者からの「期限の利益喪失」の主張

貸金業者からの「期限の利益喪失」の主張

  • 「期限の利益」とは分割払いの期限まで支払いを待ってもらえる利益
  • 貸金業者が過去の延滞を理由に期限の利益の喪失を主張する
  • 主張が認められるかどうかは取引中の貸金業者の対応次第
  • 最高裁平成21年9月11日判決では貸金業者の主張は認められなかった

 

過払い請求に対する「期限の利益喪失」の主張とは

継続的なキャッシング取引の契約書には通常、「期限の利益喪失規定」があります。これは、借主が返済期限に返済しなかった場合には、期限の利益(分割払いの期限まで支払いを待ってもらえる利益)を喪失して、残額全額を一括して支払う義務を負うという趣旨の規定です。

借主が約定の返済期限に返済できず、期限の利益喪失規定が適用になると、借入残額全額を支払う義務を負い、通常の利息の上限利率よりも高い遅延損害金の上限利率を支払わなければならなくなります。

貸金業者は、取引中は期限の利益の主張をしなかったにも関わらす、過払い金の返還請求がされると突然、過去の返済の遅れを指摘し、上記期限の利益喪失の主張をすることがあります。このような主張が認められると、過払い請求が認められないばかりか、高い遅延損害金利率で計算した結果、完済であったはずの取引が完済でなくなり、残高が残っているということになってしまいます。

アイフルやCFJなどの会社から、最近よく主張されます。下級審では、貸金業者の主張を認める判例もあります。

期限の利益喪失の主張は信義則に反し無効という反論

貸金業者は、借主が返済期限に返済しなかった場合にも、遅れた日数分のみの遅延損害金を受け取り、一括払いの請求をしないことがほとんどです。一括払いの請求をしても、借主が破綻してしまうだけで、それよりも取引を長期に継続してもらい、利息を受け取った方が得になる場合が多いからでしょう。

このようなケースにおいて、以前の裁判例では、一括請求をしていないことや追加貸付を行っていることを理由に、貸金業者は借主に対して期限の利益を再度付与していると判断されることがほとんどだったのですが、最高裁平成21年4月14日判決では、貸金業者が一括請求をしていなかったことのみを理由として再度期限の利益を付与したとは言えないと判示しました。

最高裁平成21年4月14日判決全文(最高裁HP)

しかし、貸金業者は、一括請求をしていないこと以外にも、借主が期限の利益を喪失していないと信じても仕方がないような対応をしていることが多く、その対応次第で、借主側から「期限の利益喪失の主張は信義則に反し認められない」という主張ができます。

ただし、常に信義則違反と判断されるわけではなく、取引中の貸金業者の対応(領収書の弁済金の充当記載の仕方や、遅延連絡時に担当者が何と言ったかなど)により判断は異なることとなります。

期限の利益喪失主張を信義則違反とした最高裁判決

最高裁平成21年9月11日判決の事案では、貸金業者による期限の利益喪失の主張を信義則違反であると判断しました。

この最高裁判決の事例では、貸金業者は、借主が第5回目の支払い期日における支払いを遅滞したことにより期限の利益を喪失したと主張しました。しかし貸金業者は、第6回目の支払期日以降は弁済を受けるたびにその弁済金を残元本全額に対する遅延損害金と残元本の一部に充当したように記載した領収書兼利用明細書を借主に送付していたものの、第5回目の支払期日の翌日に借主に送付した領収書兼利用明細書には、弁済金を利息及び元本の一部に充当したことのみが記載されていて、借主が支払いを遅滞したことによって発生したはずの1日分の遅延損害金に充当した旨の記載はなかったことなど、借主が期限の利益を喪失していないと誤信しても仕方がないような対応をしていました。

また、この他にも、第5回目の支払期日の前に貸金業者の担当者が「15万円くらい支払っておけばよい」などと言ったことなども、借主が期限の利益を喪失していないと誤信しても仕方がない理由として挙げています。この担当者の言動は、一括請求を迫る態度とは全くかけ離れているためです。

この最高裁判決の事例では、大半の弁済時に、弁済金を残元本全額に対する遅延損害金と残元本の一部に充当した領収書兼利用明細書を発行しており、第5回目の支払期日の翌日に借主に送付した領収書兼利用明細書のみ、弁済金を遅延損害金ではなく利息及び元本の一部に充当した旨の記載となっており、それでも借主が期限の利益を喪失していないと誤信しても仕方がないと判断されています。

最高裁平成21年9月11日判決全文(最高裁HP)

そして、最近貸金業者から主張される多くの事例では、期限の利益喪失後、一度も弁済金を遅延損害金に充当したことがないようなケースも多くあり、このようなケースであれば、借主が期限の利益を喪失していないと誤信しても仕方がないから、貸金業者による期限の利益喪失の主張は、借主の信頼を裏切るものであり、信義則違反であると判断されるべきでしょう。

【期限の利益喪失後に発行された領収書と判決内容の比較】

貸金業者の発行する領収書の内容 判決内容
最高裁平成21年4月14日判決の事例 弁済金を遅延損害金に充当した旨の記載 貸金業者による期限の利益喪失主張を認める
最高裁平成21年9月11日判決の事例 第5回目の支払期日の翌日送付分は弁済金を利息及び元本の一部に充当した旨の記載、第6回目以降送付分は弁済金を遅延損害金に充当した旨の記載 貸金業者による期限の利益喪失主張を認めない(理由-信義則違反)
最近の多くの事例 弁済金を利息及び元本の一部に充当した旨の記載 下級審の判断が分かれている

ただし、期限の利益喪失後、一度も弁済金を遅延損害金に充当したことがないようなケースであっても、取引中に発行された領収書を保管していないと、その立証が難しいということはありますので、できるだけ取引中に貸主から発行された領収書は捨てずにおいておくべきです。

受付時間以外の日時も可能ですので、ご希望の場合はご相談下さい。

対応が可能なエリアについて

ご相談は、兵庫県川西市の事務所にお越しいただくか、出張訪問相談(無料)を御利用いただき、直接お会いして行う必要があります。
訪問場所は、事務所の最寄り駅であるJR川西池田駅から電車で約1時間以内で行くことができる駅の周辺とさせて頂いています。具体的には、下記の路線図の周辺となります。これより遠方の場合はご相談ください。

対応エリアマップ

※上記対応エリアは目安です。エリア外の方もまずはお問合せください。

相談のご予約

ご予約はこちらから

出張訪問サービス

地図 松谷司法書士事務所 兵庫県川西市栄根2丁目2番15号サカネビル3階

事務所案内はこちら

フリーダイヤル:0120-974-316
対象地域
兵庫県

・神戸市・尼崎市・西宮市
・芦屋市・伊丹市・宝塚市
・川西市・三田市・篠山市
・猪名川町・明石市
・加古川市・姫路市

大阪府

・大阪市・堺市・池田市
・箕面市・豊中市・吹田市
・茨木市・高槻市・摂津市
・寝屋川市・枚方市・守口市
・門真市・大東市・東大阪市
・能勢町・豊能町