他の手続きとの関係

TOP特定調停後に過払い請求できるか?

特定調停後の過払い請求の問題点

  • 調停調書には確定判決と同一の効力がある
  • 「相互に債権債務がないことを確認する」清算条項の効力が争点
  • 請求を認めた判例と認めなかった判例両方存在した
  • 平成27年9月15日、最高裁が判断を下した

 

特定調停とは

特定調停というのは、借金が増えて、返済ができなくなるおそれのある状態となったときに、裁判所に申し立てて、債権者と話合いをすることを目的とする手続です。簡単に言いますと、支払いが難しくなってきた債務者が、支払いができるように裁判所が仲介して調整するということです。

債権者との間で合意が成立すると、調停調書というものが作成されます。調停調書には確定判決と同一の効力があります。

特定調停後に過払い請求できるか?

上記のように、特定調停は貸主と借主が話し合って合意したものですので、原則として双方がその内容に縛られることになります。では、特定調停の結果、債権者との間で合意が成立した後に過払い金が発覚した場合、その返還請求ができるでしょうか。

調停の条項には、「相互に債権債務がないことを確認する」というような条項が設けられている場合があります。このような条項を「清算条項」といいますが、このような、借主が貸主に対してなんらの債権を有していないことまで確認した清算条項が設けられている場合でも、過払い請求ができるのかという問題です。

最近では、清算条項は、「(借主が)債務を負担していないことを確認する」となっている場合が多いようです。借主が債務を負担していないことしか確認しておらず、債権が存在しないことは確認していないため、この内容であれば問題なく過払い請求は可能です。

問題は、昔成立した特定調停の中で、「相互に債権債務がないことを確認する」となっている場合です。「相互に」債権債務がないということは、「貸金業者が過払い金の返還債務を負っていない」ということを調停で確認しているということになり、調停調書には確定判決と同一の効力がある以上、争うことができないようにも思えます。

この点に関して、以前は、下級審で、調停を利息制限法という強行法規に違反していることを理由として、または錯誤により無効とし、過払い金返還請求を認めている判例もある一方、過払い請求を認めない判例もあり、判断が分かれていました。

最高裁平成27年9月15日判決

このように、判断が分かれていた特定調停後の過払い請求ですが、平成27年9月15日、最高裁判所が初めて判断を下しました。

最高裁平成27年9月15日判決-最高裁HP

この事案では、借主(過払い請求権者)は、調停成立時点では過払いが発生しており、債務が存在しないにも関わらず、調停で債務の支払義務が認められていることから、調停を無効であると主張していました。

これに対して、最高裁は、以下のような判断をしました。

1.調停自体は有効

「本件調停は特定の期間内の借入れについての支払義務を確定するものである。そして、この期間内の取引を利息制限法の制限利率に引き直して計算した残元利金を超えない金額の支払義務を確定しているから、調停で確認された債務額は、利息制限法違反といえない。また、調停の対象となった期間以前に発生した過払い金については、清算条項の対象ではない。以上から、調停は全体として有効なものである。」

調停の対象となった期間以前の取引を無視して計算すれば、確かに調停で確認された債務額は、利息制限法違反とはいえません。したがって、調停は有効であると判断されました。

ただし、以下のような理由から、調停は有効ですが、調停成立時点で発生している過払い金は支払う必要があると判断されました。

2.清算条項は、過払い金に及ばない

最高裁は、過払い金に清算条項の効力が及ばない理由を、次のように説明しました。

「特定調停手続きは、支払い不能に支払不能に陥るおそれのある債務者等の経済的再生に資するため,債務者が負っている金銭債務に係る利害関係の調整を促進することを目的とするものであり,特定債務者の有する金銭債権の有無やその内容を確定等することを当然には予定していないといえる。本件調停における調停の目的は,A取引のうち特定の期間内に被上告人がAから借り受けた借受金等の債務であると文言上明記され,本件調停の調停条項である本件確認条項及び本件清算条項も,上記調停の目的を前提とするものであるといえる。したがって,上記各条項の対象である被上告人とAとの間の権利義務関係も,特定債務者である被上告人のAに対する上記借受金等の債務に限られ,A取引によって生ずる被上告人のAに対する過払金返還請求権等の債権はこれに含まれないと解するのが相当である。」

つまり、特定調停制度は、借主の持っている債務に関する調整が目的で、借主の債権を確定することは予定していないから、借主の有する過払い金債権金は、調停の対象となった取引の中で発生している過払い金であっても、清算条項の対象とはならず、請求することができると判断したものです。

3.調停に基づき支払った金額は有効

調停を有効なものと判断した以上、借主に債務の支払義務があるという判断も有効なものとなります。したがって、調停調書に基づいて調停後になされた支払は有効なものとされ、借主が請求できる過払い金は、調停時に存在していたものに限られます。

任意和解後の過払い請求に与える影響

上記最高裁判決では、特定調停制度は、債務者が負っている金銭債務に係る利害関係の調整を促進することを目的とし、債務者の有する金銭債権の額を確定することを当然には予定していないから、過払い金返還請求権の有無に対しては、清算条項の効力は及ばないと判断されました。

したがって、任意和解の場合にも、「債務者が負っている金銭債務に係る利害関係の調整」という目的で和解契約が締結された場合には、過払い金返還請求権の有無に対しては、清算条項の効力は及ばないと考えてよいでしょう。逆に、債権者と債務者相互の債権債務全般を調整する目的で和解契約が締結されている場合には、過払い金返還請求権にも清算条項の効力が及んでいるということになります。

受付時間以外の日時も可能ですので、ご希望の場合はご相談下さい。

相談のご予約

ご予約はこちらから

出張訪問サービス

地図 松谷司法書士事務所 兵庫県川西市栄根2丁目2番15号サカネビル3階

事務所案内はこちら

フリーダイヤル:0120-974-316
対象地域
兵庫県

・神戸市・尼崎市・西宮市
・芦屋市・伊丹市・宝塚市
・川西市・三田市・篠山市
・猪名川町・明石市
・加古川市・姫路市

大阪府

・大阪市・堺市・池田市
・箕面市・豊中市・吹田市
・茨木市・高槻市・摂津市
・寝屋川市・枚方市・守口市
・門真市・大東市・東大阪市
・能勢町・豊能町