TOP他の手続きとの関係
当事務所で多重債務のご相談を受けた場合、債務全体の状況をお聞きしたうえで、任意整理や民事再生による分割払いが全く不可能なようであれば、自己破産の手続きを選択します。たとえば、生活保護を受けておられるような場合には、生活保護費は返済には使えませんので、自己破産手続きをとることになります。
自己破産の準備中に過払い金が存在することが明らかになった場合には、自己破産の申立前に過払い金の回収を完了し、その一部を破産申立書作成費用や、やむを得ない生活費、税金などの支払いに充てます。
過払い金を事前に回収せず破産申立をし、過払い金の合計が30万円(大阪地裁の場合) を超えている場合には、過払い金の合計額を破産債権者に対して配当しなければならず、破産申立書作成費用等を控除することができなくなってしまいます。したがって、上記のような流れで手続きを進めます。
このような方法をとれば、申し立て費用がないために破産申し立てをためらっておられるような場合であっても、費用の負担なく自己破産手続きができることになり、有効な方法です。
裁判所に自己破産を申し立て、免責決定が出て自己破産手続きが終わった後に、実は過払い金が存在していたことが判明するという場合があります。このような場合は過払い金の返還請求は可能です。
過去に、免責決定後に過払い返還請求をすることが権利濫用であるとして貸金業者が争った例がありますが、裁判所は、権利濫用であるという貸金業者の主張を認めず、返還請求を認める判決(東京高裁平成15年4月14日判決)を下しました。判例があるからといって必ず同様の主張がみとめられるとは限りませんが、「過払い金」というものの存在が一般的になる以前に破産手続きをしたのであれば、返還請求が認められる可能性は十分にあります。
ただし、信販会社の場合などで、キャッシングの取引について過払い金が発生している場合であっても、ショッピング分の取引について(業者からみての)債権がある場合には、過払い金請求時に、破産手続きの際に免責となっているショッピング債権と相殺することについては、これを認めた判例があります(平成17年5月27日名古屋地方裁判所判決)。
そうすると、過払い金は、破産手続きにより免責になったはずのショッピング債務の分、減らされることとなります。
最近は、自己破産申立時に過払い金の調査をするように裁判所からも指摘がありますが、以前は貸金業者が取引履歴の開示に非協力的であったり、グレーゾーン金利を有効とする法律(貸金業法43条1項) が平成18年1月13日の最高裁判決により事実上適用の余地がなくなる以前には、その回収が非常に困難であったこともあり、過払い金の存在が見過ごされたり、回収されなかったりするようなこともありました。
このように、自己破産手続きが終わっていても過払い金の精算が終わっていない場合はありますので、その可能性がある場合には、司法書士にご相談下さい。